死んだ。死んだ後、堕ちた
不思議なものだ、天界などに登ることは無いとは知っていたが…現世に留まらずにすぐに魔界とやらに堕ちていった
堕ちるのは慣れたものだ。永遠の落下に比べれば…ここはなんと素晴らしいのだ
少しの間落下したかと思えば、着いた底の先の沼にその身を沈める
…ゆっくりと落ちてはいるのか?しかしここは…
呼吸が苦しいこともなく、痛みも伴わない
そしてとても…暖かい
これが死する時の境遇か?
生前の雪に埋もれて悴んだ手足で、空腹に耐えながら進んだあの時の方が辛かったぞ?
…だがしかし、だからこそ、ここは恐ろしいのだろう
全てを諦め、その身を崩すのには最適だ
死ぬんだ
死して、ようやく、消滅するのだ
何も残らない
誰も見ない
…悪くない
ここならば、これならば
独りの苦しみも、探す悲しみも、希望の冷たさも、何もかも感じない
考えなくていい
想わなくていい
足掻かなくていい
泣かなくていい
もう、笑わなくていい
いい
最期がこんなに暖かくていいのだろうか。と
考えなくて。いい。
そうだな
やっと、終われるんだ
おやすみ
(消去ED)