俺様には名前が無い
産まれながらにしてお袋も親父も偽名を使って逃亡生活を行う詐欺師一家だ
無論俺様も物心ついた頃にはもう3つも名前がある。本当の名前なんてしらねぇし無いかもしれない。
お袋も親父も、俺様に付けた最初の名前なんてしらねぇし、そもそも本人自身の名前だって覚えてないそうだ。
そんなんだから俺様は名前にこだわりは無い
旅家族の息子の名前。サーカス員の名前。売られてしまった可哀想な子供の名前。親父に殺された娘の名前…
どれも俺様であり、“俺様”ではない
全て親のものの名前だ。
そうしているうちに
町医者の助手の時に親父は気が狂った患者に殺されて死んだ
漁師の見習いの時にお袋は海に流されて死んだ
俺様は逃げて逃げて、はたと気がついた。
今の俺様は“名無しの俺様”だと
ようやく念願の俺様の為の名前がつけられるのだと!まぁ、もう少し後でもよかったんだがな、少し悲しいぜ。
しかしぼーっとしてる場合では無いのだ!
散々溜まって来た罪のツケが、名無しの俺様に来ちまったらどうしようもない!逃げられない!
早く次の俺様を作らねば…次の俺様は…そうだ聖人にしよう!
船旅で一緒になってたやつからもらった聖書!あれ船の上で暇すぎて読みまくってたから聖人ごっこならできんだろ!!
じゃあ次は俺様の名前だな。かっこいい音の響きがいいな…お袋が花言葉とか好きだったな
…ふぅん?赤のストックが「私を信じて」…
いいじゃんストックって響きも、信じろよって感じも!他の色だと意味変わっちまうな…赤…あか…レッド…
レッドラムとかどうよ!なんかどっかで聞いた気がするが…!ストック・レッドラム!
俺様の名前だ!俺様は聖職者ストック・レッドラム!
うん!いい響きだ
では行くぞストック。
親父の教えその1「大きな目標を立てずに小さな目標からこなす」
まずはちっこい村に教えを説こうか、そうして俺様好みの村に育て上げてから食べよう!
お袋の教えその2「育てるなら最後まで愛情持ってたっぷり育てる事、最後に美味しいところを心置きなく自分のものにするなら、全ての工程を怠るな!」
げひひ!神様だか天使様だか知らない村人達を俺様好みに育てて、育てて金銀財宝地位名誉全て頂こうでは無いか!!
(ここ↑の裏に流れる回想コマ分↓)
「はじめまして。ワタクシ聖職者ストックと申します…神の導きの元ここら辺の村に教えを…との事ですが迷ってしまい…もしよろしければ一晩泊まらせて頂けないでしょうか…」
「おやお困り事ですか?ワタクシにお任せあれ、いえいえ、宿のお礼ですよ(テキパキ)」
「随分と美しい村ですね…ワタクシ好きですよ、この様な平和な村(手助けテキパキ)」
「もしよろしければワタクシが全て導いて差し上げましょうか!あぁでもお宿が大変ですね…勿論お宿分もしっかりお礼いたしますよ!(行動での問題解決)」
…ふふふ弱々しく対処し、こいつ出来る奴だと思わせたらこっちのもんよ…後は俺様のお言葉を有難く受け取れ愚民共!!
・「この土は水を保てません…土を育てましょ(バーカ!肥料とか使わんのかこいつら!てめぇのクソでも混ぜとけバーカ!)」
・「神は己の中に灯ります。自らを攻めず、信じてあげてください(自己肯定底民のクズめ!いじけんなうぜぇぞ!)」
・「貴方の進む道は苦難の牢獄でしょう…別の道を選ぶこともまた。人生の大切な選択なのですよ…(おまぇさん才能ねぇよ…やめとき)」
・「それは価値のある物…ここで眠らせておくべきではありません…世界に花開かせましょう…!(ファーーー!!!!お宝じゃーーん!!それ高値で売り捌いて別の種買って育てりゃここじゃ最高に生産できっぞ!)」
・「えぇ、落ち着いて、今言葉を紡ぎ伝えるのです…(いけーーー!!さっさと結婚しろーーー!!)」
…へへっ!大分栄えて来たじゃねぇか…俺様の村…!変な商人が寄り付いたってここに元変な商人もヤブ医者も町娘(男)もザル漁師もやってきた俺様がいるんだ…この村を他人で汚しはさせねぇぜ…俺様はこの村で天下を取る!ここは俺様の!ストック様の村だ!!!
あーあ、やっちまったな。
この俺様が全てを頂く前に未知の病原菌なんて貰っちまうなんて…
しかも治し方もわからねぇよく死ぬ奴じゃねぇか…適当に処方して治して来たヤブ医者の俺様でも対処ができねぇ…
俺様もここまでか…患者に殺され、海に殺され、病原菌に殺される我が一族…くっ情けねぇ…こんな事だったら神のお告げとかで村の可愛い子に告白して子供でも作っておくんだった…!でもあの子出世して別の街行って繁栄したからな…毎年色々送ってくれて…村の貢献してくれてるよ…
あーあ、ぼーっとしてきた。
あぁ?
何泣いてんだこいつら
ケッ!!俺様の育てた村人だろうがてめぇら!何シケた面してんだ…折角大きく育てたってのに面潰れじゃねぇか…仕方ねぇな…最後まで世話の焼ける奴らだぜ…
「…泣かないで下さい。大丈夫。ワタクシはようやく神の側に向かえるのですよ?」
“くよくよすんじゃねぇ!俺様的に悪事バレずに死ねるんだぜ!”
「ワタクシの教えは全てこの村に残せた…ワタクシは役目を全うしたのです…だから…
だからこれからも、ワタクシが居なくても…ワタクシの意志を継いだ…貴方達が胸を張って生きていれば…それは神と…ワタクシが望む事なのです…」
“俺様が教えた事忘れんなよ!詐欺師のいろはだぜ…この村を衰退させんじゃねぇぞ”
「さぁ胸を張って、この村は、ワタクシの大切な家族達なのですから。悲しまないで」
“さぁ胸を張れ!この村は俺様の大切な所有物なんだから!俺様をがっかりさせるな!”
「ワタクシは先に逝き、皆様を見守ります」
“先に逝くぜ、あばよ”
まったく…最期まで…俺様を…信じてて…
馬鹿な奴らだぜ
ロベリア「気に入ったぞ?人間」
ストック「…あ゛?」
ロベリア「貴様天使に相応しい魂をしているな…貴様なら雑魚人間共を綺麗に騙して殺して魂も何もかも奪えそうだ。貴様の行いは全て知ってる。どうだい?まだ奪い足りないだろう?先程のお言葉通り、天使様に使えて差し上げましょうか?聖職者サマ?(悪笑い」
ストック「…はっ!なぁんだ!天使サマも随分人が悪そうな…人か?まぁいい
てめぇ様は俺様の全部を知った上でこの俺様を天使風情に仕立て上げようって思ってんのか?クソほど笑えるな!いいぜ!!ではでは天使サマ。ワタクシは貴方様に使え、その命以上のモノを奪ってしんぜよう…まぁ天使?って何するか知らんけど」
ロベリア「はっはっは!!!優秀優秀!!1からしっかり教えてやるからその栄養豊富な脳味噌に叩き込むんだな!で?てめぇ様のお名前はどうするんだい?名無しの詐欺師様?」
ストック「へへ!俺様は天使ストック。ストック・レッドラム様だ。よろしくな」
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