コン「…魂還者…とはなんだい?」 ジェロ「…どうした藪から棒に…あぁ書類があったのか… 私も噂程度にしか知らないがな、聞いた話によると…天使、死神、悪魔。その3種類が人間の魂を死後回収していくらしい。悪魔の場合殺されて魂を喰われてしまうって噂だ」 コン「…何故噂と?」 ジェロ「え?ほら見たことある人が全然いないし、子供の見た夢物語なんじゃないか〜って事だよ。まぁ死んだらどうなるかわからないから、死後安心したいって事で言われた内容だろうな… 良い行いをすれば天使が迎えに来てくれて、そうでなければ死神に連れてかれる。死神と天使は空の上の天界に連れられ、悪魔に魅入られた奴は、一生この下の魔界から戻っては来られない。っていう言い伝えだろうよ、悪い事はしちゃいけないよっていうさ」 コン「成程。アレをそう呼び、大抵は見えないのか」 ジェロ「ぇ」 コン「以前。君は何故ケヴィン団長の死期がわかったか?と聞いたね?アレは俗に言う…“天使”のお迎えが来ていたからなんだよ」 ジェロ「ほ…ほんとに??!?」 コン「あぁ、ウェーブのかかったゴールデンの髪に赤い瞳、そして何より6枚分の鳥のような白い羽根…の女性が団長を優しく抱えていたよ。悪いものでは無いだろうが、団長はこの後死ぬのだろうな…と」 ジェロ「ぉおおぉう本物…///」 コン「ちなみにトマスの時には羽根は無い普通の男性だったが…優しそうで仕事をしっかりとこなすタイプに見えた。あの場所には沢山魂が落ちてしまったからな…沢山回収されたのだろう…名前の程恐ろしい存在では無かったよ」 ジェロ「死神って言ってもお迎え係なのかな…うん…よかった…ちゃんと上に上がれたんだな…」 コン「ちなみに私が把握している範囲では、レナルド騎士団全員その…凄い髪型だった男性と、凄い髪型たっだ女性が回収していたよ」 ジェロ「髪型…?まぁ…しかしみんな無茶して全員敵陣に突っ込んで行ってしまったからな…帰ってこなければ意味が無いだろう…」 コン「…少し士気を上げすぎてしまったのかもしれないねぇ」 ジェロ「でもこれでみんな天国に行ったんだな…ぐずっ…」 コン「それなんだが。一つ問題があってね?」 ジェロ「…え?」 コン「ローラン元国王。彼を回収した所を見た覚えが無いのだよ。」 ジェロ「!!」 コン「そしてこの前、“ここ”の下で、半分溶けながら叫んでいるようなローランが居た」 ジェロ「…つまり…悪魔…」 コン「悪魔は人を食べてしまうんだったね…?もし彼が悪魔となり、現世に戻ってきたら、何が餌食になると思う?」 ジェロ「…国王レナルド…!」 コン「最悪この国全てと、今生きている私達だ」 ジェロ「…まさか今病が蔓延っているのも…内戦が勃発してるのも…ローラン様がっ…!」 コン「可能性はあるだろう。これは非常に厄介な事になった…私の演舞も巻きでいかねばな…」 ジェロ「えん…?」 コン「このままではこの国は滅ぶだろう…それは困るのだ…参った事にケヴィン団長にこの国の事を頼まれてしまったからな…最悪の事態を避けつつ…彼をなんとかしなければねぇ…」 ジェロ「…何か…何か我々でできる事はないか…?」 コン「…あるにはある。但し。貴方の覚悟が必要となる。 …見た限り、悪魔と会話できるのは悪魔自身と、見えている人間のみであろう 悪魔であろう者が死神であろう者を捕食しているのも見たことがある。」 ジェロ「つまり…君がローラン様と話をするのか…危険すぎる…!!!」 コン「そう。上手くいけばレナルド国王も無事。失敗すれば私も喰われる。一か八かなのだよ」 ジェロ「…それで…その場合私はどうすればいい?」 コン「直球で言おう。ジェロニモ君。今、ここで、死んでくれないか?」 ジェロ「…どういう意味だ?」 コン「これには二つ…いや三つ意味がある 一つは逃亡。恐らく悪魔なら生きている限りどこまでも追って、我々を殺しに来るだろう。悪魔に食われる前に、自ら天界とやらに逃げるというわけだ。 二つは囮。君の遺体で市民の不安を煽る。悪魔なら混沌などを好むだろう」 ジェロ「…まぁ、逃げるために死んだ体を使う…となれば効率はいいがっ…」 コン「三つ目は…今ここにトマスが居る」 ジェロ「…トマス…?」 コン「…服装からいって死神にでも昇格したのだろう…今死ぬことが出来れば、確実にみんなの元に行けるだろう」 ジェロ「…このまま生きていれば…いつ来るかわからないローラン様の逆襲に巻き込まれて帰れなくなる…それどころか国全体が…食われる可能性もある…」 コン「…そう。そして今決めれば、確実に魂は救われるだろう。その命は尽きる分けだがね?」 ジェロ「…君は…私に対してどう…思っているんだ…?」 コン「…貴方の様に…異端者である私を受け入れ、真っ直ぐな目で見つめ、信じてくれる方を失うのは辛いね…だか消えてほしくは無い」 ジェロ「…死ぬのは恐ろしい」 コン「大丈夫。トマスも来ているし…それに… 死後の世界は思ったより心地良いよ?」 ジェロ「…!」 コン「“コンウェー・チャバリア“を知っているかい?150年前に錬金術を見出した偉人…だそうだが…彼の事は知っているかい?あれ私でさぁ…君ならわかるでしょう?彼にしか出来なかった錬金術の方法…」 ジェロ「…もっと…その話聴きたかったです…」 コン「あの世でいくらでも話せるさ」 ジェロ「…信じますよ…死んだって…みんなに会えるって…」 コン「あぁ…ありがとう。大丈夫、必ず上手く行くさ、君なら出来る」 ジェロ「私なら…出来る…」 コン「大丈夫だ。そうだろう?ね?トマス」 コン「そう。いい子だ」 「そう。そのまま」 「おやすみ。ジェロニモ」 トマス「ジェロニモ…!」 ジェロ「!!!」 トマス「あぁ!よかった安定した!!」 ジェロ「…トマス…?トマスなのか…!!あぁ…会いたかった…会い……え…と言う事は…?」 トマス「あぁ…お前は死んだよ…ちゃんとな」 ジェロ「…あいつの言う事…ほんとだったんだな…」 トマス「俺も驚いたぜ…まさか色々と…な…とりあえずお前をまず天界まで送る…そしたら…!!?」 ジェロ「?どうし……!街が…あんなに霧がかっていたか…?」 トマス「…ただの霧じゃねぇ…俺達が近寄れないし…透視することもできねぇ…結界…?」 ジェロ「コンフォヴァール…何を…」 コン「…ご機嫌様。レナルド国王。酷く悩んでおりますねぇ?」 _______レナルド過去(後)に続く